Vol.35 No.1 (2001.7) 発  行:視聴覚情報研究会(AVIRG) 代表幹事:熊 澤 逸 夫      〒152-8552 目黒区大岡山2-12-1      東京工業大学 計算工学専攻      TEL/FAX 03-5734-2690 T.2001年度通常総会議事録 書記 今井 篤 (NHK) 2001年度(平成13年度)AVIRGの通常総会は,5月23日(水)午後5時より,東京大 学工学部6号館61号講義室において開催されました.総会は,定足数73名に対 し,出席者17名と委任状提出者75名の計92名により成立しました.上坂会長 (東京理科大)の承認のもと,伊藤代表幹事(NHK)を議長として,以下の順で進 められました. 1.2000年度活動報告  伊藤代表幹事より,下記報告がなされました. (1) 例会の開催(5回),特別講演の開催(1回) (2) 会報の発行(6回) (3) 幹事会(6回) (4) 電子化試行状況,および会則検討状況  2000年度の活動計画に基いて,AVIRG活動の一部電子化を目的とするホーム ページを開設したこと,及び,会員への情報提供や意見交換の場として,会員 のメーリングリストを開設したことが報告されました.各アドレスは以下のと おりです.      ホームページ http://www.avirg.org      メーリングリスト kaiin@avirg.org (5/23現在,登録者数95名) 2.2000年度収支決算報告 今井幹事(NHK)より,2000年度の会計報告が行われました.昨年度,新たに計 上された会報の電子化予算については,ホームページ,及びメーリングリスト の開設にあてられたことが説明されました.会計報告後,佐藤監事(東工大)よ り会計監査報告が行われました. 3.AVIRG会則改正について  伊藤代表幹事より,AVIRG活動の一部電子化,及び会則改正に関する会員の 意向調査アンケートの結果について報告されました.また,電子化に伴う会員 の位置付け,会の組織や役員の役割などについて記した会則改正案が示され, 新会則として承認されました.(P.5参照) 4.2001年度活動計画および予算案 伊藤代表幹事より,2000年度の事業計画として,年5回の例会と,総会時には 特別講演を開催すること,各会に合わせて会報をホームページ上で公開するこ とについて説明があり,承認されました.また,例会の開催情報を会員宛ての メールおよび関連メーリングリストやニュースを通して周知し,できるだけ多 くの研究者に例会への参加を促すことについて,要望がありました.また,ホー ムページについては,関連リンクの一層の充実や,国内外の会議情報等の新し いページの作成など,内容の充実に向けて活動を進めることが報告されました.  なお、今年度1回目の会報については,会則改正の総会決議結果を周知する ため,印刷・郵送することが決まりました.以上の活動計画に基く予算案が伊 藤代表幹事より説明され,承認されました. 5.2001年度役員選出  伊藤代表幹事より,上坂会長の退任,佐藤監事(東工大)の退任, 伊藤代表幹 事(NHK)の退任,岡新監事(RWCP)の就任,熊澤新代表幹事(東工大)の就 任,他4名の幹事の新任が案として提出され,承認されました.  以上で,全議事が終了しました. U.2000年度AVIRG例会開催一覧表 ・ 2000年度通常総会特別講演  日時 : 5月25日(木)  場所 : 東京大学工学部(本郷)  参加者: 46名  テーマ: 特別講演  「1ms超並列ビジョンチップとその応用」     石川 正俊 氏(東京大学) ・2000年度7月例会  日時 : 7月27日(木)  場所 : 東京工業大学(大岡山)  参加者: 20名  テーマ: 画像処理・認識,メディア理解  1.「フィルタバンク/ウェーヴレット理論と画像処理・認識への応用」    長井 隆行 氏(電気通信大学)  2.「集積回路DA概論」    大豆生田 利章 氏(群馬高専) ・2000年度10月例会  日時 : 10月5日(木)  場所 : 東京大学工学部(本郷)  参加者: 68名  テーマ: 音声・言語処理,知識処理  1.「東芝の不特定話者音声認識技術とその応用」    正井 康之 氏(東芝研究開発センター)  2.「NHKニュース音声認識システム」    今井 亨 氏(NHK) ・2000年度11月例会  日時 : 11月30日(木)  場所 : 東京大学工学部(本郷)  参加者: 30名  テーマ: マルチメディア情報処理  1.「超高速映像検索と国際標準化:MPEG7」     山田 昭雄 氏(NEC)  2.「分身生成のためのマルチモーダル表情合成」    森島 繁生 氏(成蹊大学) ・1999年度1月例会  日時 : 1月18日(木)  場所 : 東京大学工学部(本郷)  参加者: 43名  テーマ: 初期知覚におけるテクスチャー情報処理  1.「V4野における陰影テクスチャーの特徴抽出」    花澤 明俊 氏(生理学研究所)     2.「人間の初期視覚系におけるテクスチャー画像の処理」    本吉 勇 氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) ・1999年度3月例会  日時 : 3月22日(木)  場所 : 東京工業大学(大岡山)  参加者: 26名  テーマ: 高臨場感映像の生成と表示 1.「CAVEを利用した没入型投影ディスプレーの利用動向」    高橋 裕樹 氏(東京工業大学) 2.「多視点画像処理による臨場感コンテンツ生成技術の動向」   斎藤 英雄 氏(慶応大学) V. 2000年度AVIRG会計報告および2001年度予算  ◎収入の部 収入項目 2000年度予算 2000年度決算 2001年度予算 前年度繰越金 487,273 487,237 564,414 入会金 5,000 2,000 - 正会員会費 500,000 400,000 - 特別会員会費 210,000 330,000 270,000 雑収入 0 199 0 収入合計 1,202,237 1,219,436 834,414   ◎支出の部 支出項目 2000年度予算 2000年度決算 2001年度予算 業務委託費 400,000 321,063 100,000 会報等作成費 100,000 85,687 30,000 会報等郵送費 210,000 139,382 30,000 事務費 50,000 28,040 20,000 例会等補助費 30,000 0 30,000 電子化費 100,000 78,750 100,000 雑費 10,000 2,100 10,000 予備費 300,237 564,414 514,414 支出合計 1,202,237 1,219,436 834,414 (単位は円) W.2001年度役員 *は新任 会長: 小川 英光 東京工業大学 監事: 尾関 和彦 電気通信大学 〃 : 岡  隆一* RWCP 代表幹事: 熊澤 逸夫 東京工業大学 幹事: 井宮 淳 千葉大学 後藤 誠 富士通研究所 永崎 健* 日立製作所中央研究所 高木 幸一* KDDI研究所 倉立 尚明 国際電信電話研究所先端情報科学研究部 登内 洋次郎 東芝研究開発センター 村上郁也/竹内龍人 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 今井 篤 NHK放送技術研究所 丸亀 敦 日本電気情報通信メディア研究本部 永見 武司* 産業技術総合研究所 大脇 崇史* 東京大学 斎藤 豪* 東京工業大学 X.電子化試行および会則改正に関するアンケート結果概要 アンケート回答総数:58 Q1:AVIRGのホームページのアクセス経験 Yes 40 (69%) No(→Q5へ) 18 (31%) 未回答 0 ( 0%) 合計 58 Q2:ホームページの利用頻度 1)週1回以上 0 (0%) 2)月数回程度 8 (14%) 3)例会の前(2ヶ月に1回) 21 (36%) 4)それ以下 11 (19%) 未回答(Q1:Noの9人を含む) 18 (31%) 合計 58 Q3:ホームページの内容に満足? 満足 34 (59%) 不満 1 (2%) 未回答(Q1:Noの9人を含む) 23 (40%) 合計 58 Q4:会報のホームページからの閲覧状況 1)毎号閲覧 8 (14%) 2)時々閲覧 25 (43%) 3)印刷して閲覧・保存 1 (2%) 4)アクセスしたことがない 5 (9%) 未回答(Q1:Noの9人を含む) 19 (33%) 合計 58 Q5:会員メーリングリスト 1)受け取る手段がない 0 (0%) 2)受け取ってない(受け取り希望なし) 0 (0%) 3)受け取ってない(受け取り希望あり) 26 (45%) 4)メーリングリストの内容に満足 28 (48%) 5)メーリングリストの内容に不満 0 (0%) 未回答 4 (7%) 合計 58 Q6:一部電子化の継続の可否 継続すべき 57 (98%) やめるべき 0 (0%) 未回答 1 (2%) 合計 58 会則改正に対しては回答者の90%以上が肯定的な意見であった.主なコメント は以下のとおり. ・ 電子化は時代の流れである ・ 電子化は時代の流れだと思うが,それに頼り切ることに問題はないか ・ 会費の完全無料化は可能であれば望ましいが,必要に応じて徴収して も良いのではないか 今後のAVIRG活動については,講演内容や討論のスタイルなど,他の学会 にない独自色を出すことが多く望まれました. Y.視聴覚情報研究会・新会則 第1章 総 則 第1条 本会は視聴覚情報研究会と称し,英語名を Audio−Visual Information Research Group(略称AVIRG)とする. 第2条 本会は営利を目的とせずに,視覚,聴覚,触覚等に関わる情報科学, 情報工学,人文科学(以後同分野と略記)に関する研究,及び開発に関する情 報を会員内外に普及し,また,本会独自の方針に従って同分野に関する研究, 調査を実施し,研究,開発を奨励し,それによって同分野の発展と, その方向づけを期し,同時に会員間の交流を図ることを目的とする. 第3条 本会は、第2条の目的を達成するために,次に掲げる事業を行なう. (1) 会報を電子媒体にて周知,発行すること. (2) 同分野に関する一切の事柄について,研究会,発表会,学習会,講演 を主催,共催,後援すること. (3) 同分野に関する一切の事柄について収集,選択した情報を公開する場 および会員間の情報交換の場としてインターネット上に独自のサイトを維持す ること. (4) 同分野の発展に役立つ研究,開発を行なう個人,団体を本会自ら表彰 し,もしくは表彰の斡旋を行なうこと. (5) その他第2条の目的を達成するに必要と認められること. 第2章 会 則 第4条 本会の会員は,名誉会員,正会員,特別会員の三種とする.会員の種 別の決定,変更は幹事会がこれを行なう. 第5条 次の者は本会員とする. (1) 本会会則の趣旨に賛同し,別に定める電子的手続きに従って入会したもの. (2) 第6条に該当するもので,幹事会の推薦を受け,本人が承諾したもの. 第6条 本会および同学の発展に多大なる貢献をしたと認められる個人につい て幹事会はこれを名誉会員として推薦することができる. 第7条 第5条第1号の規定によって入会した団体はこれを特別会員とし,1ヶ 年につき会費を1口以上納入しなければならない.特別会員年会費は年額1口 30,000円とする.特別会員は第3条第3号に挙げるインターネット・サイトに 本会会則の趣旨に従い内容に関して幹事会の承認を得た上で広告を掲載するこ とができる. 第8条 第5条第1号の規定によって入会した個人は,これを正会員とする. 第9条 本会の会員たる資格は次のいずれかに該当する場合喪失する. (1) 本人の死亡,失跡及び団体の解散. (2) 本人が別に定める電子的手続きに従って退会手続きをしたとき.及び 団体が書面をもって退会を届け出たとき. (3)除名決定が幹事会の議題に提出され,可決された場合には資格を喪失す る.この場合に該当会員は幹事会においてまたは何らかの通信手段によって自 己の意見をのべる権利を有する. 第10条 本会会員が本会運用の秩序を著しく乱したとき,本会の名誉を公に 著しく傷つけるか,または本会に多大の不利益をもたらしたとき,若しくは不 利益をもたらすことが明らかとなったとき,幹事会は除名決定について審議し なければならない. 第3章 役員および組織 第11条 本会に会長をおく.会長は本会を代表し,総理する. 第12条 本会に代表幹事を1名おく.代表幹事は本会業務の執行を総括する. ただし代表幹事は会長の委任により本会を総理することができる. 第13条 本会に代表幹事を含めて幹事を若干名おく.会長及び幹事は幹事会 を構成し,この会の業務について,本会則に基づいて,決議,執行,あるいは 本会を代理する. 第14条 会長,代表幹事,及びその他の幹事は幹事会において正会員より選 出し,任期は1ヶ年とする.会長及び幹事は再任を妨げない. 第15条 本会に監事を2名おく.監事は幹事会において正会員中より選出し, 任期は2年とする. 再任は妨げない.監事は本会の他の役員になることができない. 第16条 監事は次のことを行なう. (1) 本会の財産の状況を監査する. (2) 幹事の業務執行の状況を監査する. (3) 上記第1号,上記第2号に関して,不正のおそれがあることを発見し た場合,監事会を招集させ,議長となって,これを報告し不正に対処しなけれ ばならない. (4) 毎年度の決算について監査結果を幹事会で報告する. (5) 会の運営に対して寄せられる会員の声をモニターし,幹事の対応の必 要性を感じる場合に監事会を招集し,議長になって問題解決に努める. 第4章 会 議 第17条 会議は監事会,幹事会とする.幹事会は通常幹事会と拡大幹事会か らなり,拡大幹事会では本会の前年度運営内容と次年度運営計画の報告を行な う.通常幹事会は本会の運営に関する全ての決定権を有する.監事会は本会運 営の適切性を監査する. 第18条 通常幹事会は会長,代表幹事,及びその他の幹事によって構成し, 例会開催時等に適宜開催される. 第19条 拡大幹事会には通常幹事会構成員以外の正会員等の参加を妨げない. ただし正会員等とは正会員及び正会員であった名誉会員のこととする.拡大幹 事会は毎年1回4月1日から5月31日までの間に開催し,会長が招集する. なお前期期間以外にも必要に応じて臨時拡大幹事会が召集される. 第20条 監事会は監事,会長,代表幹事,及びその他の幹事によって構成し, 第16条にもとづいて監事が招集を決定したときに開催される. 第21条 拡大幹事会の開催は開催日の1週間前までに電子メイルによって正 会員等に通知しなければならない. 第22条 拡大幹事会の議長は会長がなる. 第23条 次のことは通常幹事会の承認を経た上で拡大幹事会で報告しなけれ ばならない. (1) 予算及び決算 (2) 事業計画,事業報告 (3) その他,本会則により監事,その他委員会に委任した以外の事項 第5章 資産および会計 第24条 本会の資産は次のものとする. (1) 目録記載の財産 (2) 特別会員の会費 (3) 事業に伴う収入 (4) 資産の果実 (5) 寄付金品 (6) その他の収入 第25条 会計担当幹事は監事の承認を得た上で前年度決算,該当年度予算計 画及び前年度末3月31日時点の財産目録を拡大幹事会で報告し,これらを保 管すると共に本会サイトを通じてインターネット上で公開しなければならない. 第26条 本会の会計年度は毎年4月1日に始まり翌3月31日に終る. 第27条 本会の予算は会計担当幹事が作成し,通常幹事会及び監事の承認を 経て,会計担当幹事が管理する.年度が始まって1ヶ月以上経過してなお予算 が決定しない場合には,通常幹事会は必要最小限の範囲内で,前年度予算の1 2分の1を越えない範囲をもって1ヶ月ずつ暫定予算を作成執行できる. 第28条 本会の予算を年度途中で変更しようとする場合には,通常幹事会及 び監事の承認を経なければならない. 第29条 本会の決算は会計担当幹事が作成し,通常幹事会及び監事の承認を 得なければならない. 第30条 本会の書類一切は常に会員の求めに応じて閲覧に供さねばならない. 第6章 雑 則 第31条 本会則の変更は幹事総数の半数以上の賛成をもって通常幹事会で可 決し,ホームページや電子メイル等で会員に変更案を周知した後,監事の承認 を得なければ行えない. 第32条 本会の解散に関しては会則の変更と同じとする. 第33条 本会解散後残余の財産は,会則の変更と同じ手続きにより,本会の 目的に最も近い目的を有する団体に寄付するものとする. 第34条 本会運営に必要な細則は通常幹事会の議決と監事の承認をもって別 に決める. 付 則 第1条 本会則は西暦2001年6月1日より実施する. 第2条 初年度の会長,代表幹事,幹事,監事は,前視聴覚情報研究会会則に 従い,前視聴覚情報研究会の会長,代表幹事,幹事,監事が合議の上候補者案 を作成し,前視聴覚情報研究会の総会において承認を得て選任する. 第3条 以前の視聴覚情報研究会の会員は新会則の下における同会の会員とする.   (2001年5月23日発効) Z.2000年度通常総会特別講演記録 「量子力学『的』コンピューティングのすすめ」を聞いて 講演: 上坂 吉則 氏(東京理科大学) 報告: 久下哲郎(NHK放送技術研究所)  昨今,量子コンピューティング(QC)や量子暗号などの言葉を良く耳にする. 量子力学といえば,観測の不確定性がまず頭に浮かぶ.例えば,かつての"ニュー ラルネット”や"ファジ代数"のように,曖昧さ,あるいは直感概念的とでも言 うのか,従来の決定論的な計算原理とは別の「計算原理」を提唱しているので は?といった幻想的期待を持っていたのは,筆者だけであろうか? ところが,本講演で上坂氏は,QCに纏わりつく「怪しげ」な装いを快刀乱麻の 如く切り捨てられ,量子計算とは,2値のテンソル積ベクトルにユニタリ行列 を乗ずること,と明確に述べられた. QCのユニタリ行列を構成する単位は,"制御NOT"と呼ばれる2入力2出力の4端子 の回路で,これを複合的にシケンシャルに並べることで,所望のアルゴリズム を実行するユニタリ行列を構成するらしい.すなわち,従来のノイマン型計算 機のアルゴリズムをこのユニタリ行列に変換再構成することがQCのプログラミ ングということになる. QCの物理的な原理は,制御NOTなど多数の部品からなる量子デバイスの量子状 態遷移を決定論的に制御することらしく,QCの高速性は,この量子状態遷移が, 一気に「無限小」の時間で済むことを前提にしているらしい.すなわち,計算 量爆発のNP問題を解決することが見込まれ,暗号の解読など現代的な実利性へ の期待も,流行の背景と思われる. ところが,実用的なアルゴリズムを実行するには,膨大なサイズのユニタリ行 列となり,そのような量子デバイスの実現性は,まだかなり先となる. このため,上坂氏は,「古典的」デバイス,LC(コイル,コンデンサ)による線 形受動電気回路で,QCのユニタリ変換と同型な処理を実行する手法を提案され た.筆者の誤解かもしれないが,量子状態の重ね合わせを,電気線形回路での 信号の重畳性に持ち込む,ということがベース概念なのだろうか?と思った. さて,提案された電気回路では,QCのキュービットが周波数としてコーディン グされるので,QCの多状態は,電気回路の周波数領域で多数の線スペクトルが 立つことに対応する.上坂氏はこの工学的課題を「周波数爆発」と表現された. 半田ゴテを握らなくなって久しい電気屋崩れの小生ではあるが,次の懸念を持っ た: 1) 周波数間隔の狭い線スペクトルを分離するQの高いアナログフィルタが実現 できるのか? 2) 過渡現象時間のロス.LとCだけで構成された回路も,現実の部品は,なに がしかのR(抵抗)成分を有する.さらに本来分離されている配線間に予期しな いL,C成分も発生する.この結果,大規模な回路全体がLCR分布定数回路系とな り,電圧源投入により過渡現象が発生し,信号検出が可能となる定常状態に達 するまで,時間ロスが発生するのではないか? さて,思いつきの批判はともかく,いわゆるQCから,「量子」という物理的な 尾ひれを取り払い,数学的に抽象化・単純化することにより,「量子」に拘ら ない別の工学的実現原理を提案する,という野心的試みは大変興味深いもので あった. 優れてAVIRG的精神に溢れた講演であったと愚考する. [.8月例会予定 8月の例会は,  日時:8月30日(木)15時〜17時  場所:東京工業大学(大岡山,石川台地区) ベンチャービジネスラボラトリ棟で開催します. 交通手段は, 東急線大岡山駅 下車,駅前です.ただし,正門から会場の石川台地区ベンチャービジネスラボラ トリ棟までは10分程校内を歩きます. 詳しくは以下のURLをご覧下さい. http://www.titech.ac.jp/maps/index-j.html http://www.titech.ac.jp/maps/ookayama/campusI-j.html 講演は, 以下の2件を予定しております. ●講演者:住吉英樹 氏(NHK) タイトル:マルチメディア教育支援システムの紹介 概 要: NHKの持つ映像資産を活用したマルチメディア教育支援システムの研究を紹介する. 我々は,将来の放送教育サービスとして,放送番組だけでなくネットワークを 使用した補足情報の提供や意見交換の場を提供する放送サービスを検討してい る.本システムは,この新しい放送サービスを前提として,学習をマルチメディ ア技術で支援し,子供たちが自ら学び,考える力,さらにはメディアリテラシー などの習得の支援を目指している.今回は映像やテキスト情報が収められた複 数のデータベースに対して自然言語で検索できるエージェント検索システムと, 学習者が検索したり独自に集めたりした映像や情報を組み合わせてマルチメディ ア・レポートとして発表できる学習用DTPP(Desk-Top Program Production)システムの2つのサブシステムについてデモを交えて紹介する. 《参考文献》 [1] 「エージェントを利用した映像検索のためのユーザーインターフェイス」  電子情報通信学会 人工知能と知識処理研究会, AI2000-26, 2000年7月 [2] 「ネットワーク上の映像リソースを使用可能なコンテンツ制作システム」  第6回知能情報メディアシンポジウム, WP3-2, 2000年12月 [3] 「NHK放送技術研究所 平成13年度公開資料 マルチメディア教育支援 システム」http://www.strl.nhk.or.jp/open2001/tenji/index.html [4] 「NHKデジタル教材 おこめ」 http://www.nhk.or.jp/okome/ ●講演者:澤田伸一 氏(東京成徳短期大学) タイトル:初等情報教育とその支援活動 概 要: 情報化社会の進展は,いよいよ教育現場にも影響を与え始めた.平成元年の学 習指導要領の改定では中学校の技術家庭科に簡単なパーソナルコンピュータの 操作が加わっただけであったが,今回改定の新学習指導要領では高等学校で 「情報科」が新設されたり,小中学校でも学習活動にパソコンを有効に使うこ とを明記している.しかしパソコンの操作ができる教師は少ないため,授業・ 指導を具体的にどう進めたらよいか,悩んでいるのが現状である. コンピュータを使った学習活動については100校プロジェクトや,こねっと・ プラン,Eスクエア・プロジェクトなどがあり,ネットワークを使った大規模 な学習活動についての報告がされている. しかし,これらのプロジェクトは教 育現場の意欲のある先生が中心となって進められたプロジェクトであり,中心 となった先生の負担は大きく,普通の公立学校で行うのは難しい. この講演では平成9年から3年間,東京農工大学の大学院生が地元の府中第一 小学校で行った情報教育支援活動を紹介し,情報工学系の大学と公立小学校の 双方にメリットがあり,かつ,普通の小学校でも負担なく実行できる情報教育 支援活動についてのひとつの方法を示す. 具体的には,小学校の先生が提案す る学習ソフトウェアを大学院生が作成し,それを授業で使用するという方法で あるが,その是非について議論をお願いしたい. 《参考文献》 [1]「情報系大学院生による公立小学校での3年間の情報教育支援とその後」 bit, 2001年3月. [2]"A support of IT education at a public elementary school by postgraduate students of computer science major", Reports of IPSJ Symposium on IT Education, pp.87-94 (1999.7). [3]"Enjoyable Educational Software on an Interactive Electronic Whiteboard Reports of 14th Symposium on Human Interface, (1998.9).