2001年度例会のご案内
AVIRG例会は
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情報科学、情報工学、生理学、心理学等の分野の話題を選んで、2ヶ月に1度開催しています。
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講演者にも聴講者にも納得して帰っていただくことを「売り
」にしています。したがって、1件に1時間から1時間半と十分
時間を取り、聴講者が疑問に思ったことはその時点で質問できる自由な雰囲気の研究会です。
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事前登録や参加費は必要ありません。どなたでも自由にご参加いただけます。
《2001年度例会》
2001年度五回目の例会は以下の日程で行われます。
(会員以外の方もどなたでも参加いただけます。事前登録や参加費は必要ありません。)
講演者:坂野 鋭 (NTTデータ)
タイトル:
「画像認識の問題としてのバイオメトリック個人認証技術」
概 要:
同時多発テロ以来,バイオメトリック個人認証技術は今世紀の中核的なセキュリティ
技術として注目されている。
しかし、現時点では個人認証のために十分な機能/性能を持った
バイオメトリクスは存在しておらず、システム的な運用により役に立つ場合もある、
というのが現状である。
本講演では,画像認識の観点から、バイオメトリック個人認証技術を包括的に
解説した上で、将来のための技術的な課題を議論する。
《参考文献》
[1] 坂野鋭,バイオメトリック個人認証技術の現状と課題,信学技報
,PRMU1999-23,(1999)
[2] 坂野鋭,バイオメトリック個人認証技術の新展開,映像情報メディア学会
技報,画像情報システム研究会, 3月1日,(2002)
[3] 坂野鋭,パターン認識における主成分分析 -顔画像認識を例として-,統計数理
,Vol.49, No.1, pp. 23-42,(2001)
[4] 坂野鋭,多重バイオメトリクスの研究動向,信学総大,PD-2-6,(2002)
タイトル:AVIRG関連分野研究成果
報告会
「東京工業大学4研究室による通信放送機構研究開発推進制度成果報告会
」
詳細スケジュール:
15:00-15:05 研究代表者挨拶 中嶋正之(情報理工学研究科)
15:05-15:35 酒井,吉田,山岡,小林(理工学研究科):
検索者に適合した広域情報検索システムの検討
15:35-16:05 打田,内川(総合理工学研究科):
多色で不均一な表面間における色弁別
16:05-16:35 戸部,熊澤(情報理工学研究科):
主観的に重要なエッジを優先するプログレッシブ画像符号化
16:35-17:05 中嶋,高橋(情報理工学研究科):
次世代映像コンテンツの映像生成・表示に関する検討
17:05-17:10 閉会の辞 酒井善則(理工学研究科)
(会員以外の方もどなたでも参加いただけます。事前登録や参加費は必要ありません。)
講演者:渡部 修氏 (室蘭工業大学)
タイトル:
「両眼視における多重視差の脳内表現の神経回路モデル」
概 要:
多重表面知覚とは、透明面の重ね合わせなどによって、視野上の同一の領域
に複数の表面を知覚する現象である。両眼視や運動視において、このような多
重表面知覚が生じることは以前から知られてきた。しかし、多重表面知覚につ
いての計算論的研究はあまり進んでいない。これは、同一網膜座標に複数の視
差や運動方向を符号化しなければならないという、難しさが存在するためであ
る。例えば、初期視覚の計算論的モデルとして広く用いられている正則化理論
は、一価関数を復元する計算理論となっているため、そのままでは多重表面を
扱うことはできない。今回、両眼性細胞モデルとしてエネルギーモデルを仮定
したとき、両眼視において多重視差がどのように符号化されるのか、また復号
化のためにはどのような仮定が必要になるのかを議論する。さらに、これまで
に提案されてきた多重表面知覚モデルのいくつかについて再検討を行う。
《参考文献》
[1] Kikuchi, M. et al. (2001) Perception of multiple depth at a single
retinal position. Perception, 30 Supplement, 42.
[2] 志沢. (1994) 両眼立体視におけるトランスペアレンシーの計算理論と
2重視差の一撃計算モデル. 電子情報通信学会誌D-II, J77-D-II,
1245-1254.
[3] Stevenson, S. B. et al. (1991) Depth attraction and repulsion in
random dot stereograms. Vision Research, 31, 805-813.
[4] Treue, S. et al. (2000) Seeing multiple directions of motion ---
physiology and psychology. Nature Neuroscience, 3, 270-276.
[5] Zemel, R. S. & Pillow, J. (2000) Encoding multiple orientations in
a recurrent network. Neurocomputing, 32, 609-616.
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時 間:15:30〜17:00
講演者:仲泊 聡氏(神奈川リハビリテーション病院眼科)
タイトル:「脳損傷患者の愁訴と検査結果からみた立体視のメカニズム」
概 要:
脳損傷に伴って立体視に異常が生じることは古くから指摘されている。両
側の頭頂葉損傷でこのような症状がみられることは、近年のサルの単一電極
法による研究結果と一致するところである。しかし、様々な脳部位に損傷を
きたした患者に立体視検査を施行するとこれを失敗する症例が少なくない。
立体視を生じるためには、両眼の視力に異常がなく、眼位が保たれているこ
とが必須である。視覚伝達路に障害を生じると視野異常をきたす。この障害
が視交叉以降で生じた場合、この視野異常は、両眼のほぼ同部位の視野に異
常をもつ同名半盲となる。同名半盲をきたした患者の中には、外斜視をきた
すものがみうけられるが、眼位が保たれていれば通常は立体視は障害されな
い。しかし、時に視力も眼位も保たれているにもかかわらず、遠近感がなく
なったと訴える脳損傷患者や立体視検査で異常をきたす脳損傷患者に出会う
ことがある。立体視という知覚現象は、単一の処理過程で成立するものでは
なく、それに到るいくつかの視覚情報処理を経て成立しているものであると
いうことは容易に推察できる。今回、実例を挙げて損傷部位と臨床症状・所
見との対応について紹介し、立体視に関わる情報処理にどのようなことが必
要になっているのかについて考察したい。
《参考文献》
[1] 泰羅. (1999) 頭頂葉の機能 視覚情報処理. Clinical Neuroscience
17, 29-32.
[2] 曽根, 他. (1999) 同名半盲における近見時の外斜視化. 日本視能訓練士
協会誌 27, 129-133.
[3] Ptito A, et al. (1991) Stereopsis after unilateral anterior
temporal lobectomy. Brain 114, 1323-1333.
[4] 仲泊, 他. (2000) 立体視の中枢機構―臨床的立場より―. 眼科臨床医
報94, 505-510.
(会員以外の方もどなたでも参加いただけます。事前登録や参加費は必要ありません。)
講演者:小谷 一孔氏 (北陸先端技術大学院大学)
タイトル:
「物体表面の微細構造に基づくシェーディングモデルと質感再現」
概 要:
ディスプレイなどにより画像表示する物体の質感には、大別して物体の
形状によるものと表面の反射特性によるものとがある。また、質感は物体
の形状や光学特性などの物理的要因、視覚・知覚などの生理的要因、認識
・記憶・感情などの心理的要因により生じる。これらの内、講演では物体
表面の反射特性について、主に物理要因について議論したい。もちろん、
画像の最終受容者は人間であるから、生理的要因と心理的要因について無
関係に議論することの不十分さは認める。しかしながら、個人性や時間変
動、非線形性を有する生理・心理的要因をモデル化するのは大変難しく、
これらの議論抜きにして質感の議論は意味がないというのでは、問題解決
が進まない。今回は、生物のバラ花弁の質感について取り上げ、花弁表面
の独特な微細構造とこれに基づくシェーディングモデルによりCG画像を
生成し、花弁の質感がどのような物理要因により再現できるかについて例
示する。また、生物であるから時間と共に成長が進み、しおれていくまで
の動的な質感の再現が行えるようなモデル化を試みる。加えて、反射特性
を表すBRDFから、物体表面の微細構造特性をモデル化する手法について解
説する。
《参考文献》
[1] 立野,剣持,小谷 、"バラの品種と成長特性を考慮した花弁の微視的構
造に基づく反射・透過モデルとCG画像生成"、情報処理学会研究報告,
2000-CVIM-120-9,pp.65-72,2000.1.
[2]早川,剣持,小谷、 "BRDFによる物体表面の微細構造の推定とBRDFの再
現"、情報処理学会研究報告 2000-CG-101-9,pp.49-54,2000.12.
[3]宮原誠、中川匡弘、向真喜男、羽山均、“テレビ画像の高品質化に重要
な物理要因−つや(かがやき感)”テレビジョン学会誌、Vol.40、
pp.1106-1112 (1986).
[4] H.W. Jensen, “Realistic Image Synthesis Using Photon Mapping”,
A K Peters, Ltd. 2001
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時 間:15:30〜17:00
講演者:茂木 健一郎氏 (ソニー CSL)
タイトル:「脳科学のシステム論的転回」
概 要:
ミラーニューロンの発見に象徴されるように、今、脳科学は「システム論的
転回」とでもいうべき変革の時期を迎えている。「見る」という単純な行為さ
えも、高次の志向性のネットワークと無関係には記述できない。
両眼視野闘争の実験などを紹介しながら、脳の中で、第一次視覚野を中心とす
る感覚的クオリアのネットワークと、高次視覚野、前頭葉を中心とする志向的
クオリアのネットワークがどのように相互作用して、環境に有効に適応できる
私たちの脳の機能が生まれてくるのかを議論する。ボディ・イメージや、アフ
ォーダンスの脳内表現について、それが志向性のネットワークの性質としてど
のように立ち上がってくるのかにも触れたい。
《参考文献》
[1] Gallese V. & Goldman A. (1998) Mirror neurons and the simulation
theory of mind-reading. Trends in Cognitive Sciences 2, 493-500
[2] Taya, F. and Mogi, K. What is salient in binocular rivalry?
Consciousness and Cognition 9, pp.53. (2000)
[3] Mogi, K. (1999) Response Selectivity, Neuron Doctrine, and Mach's
Principle. in Riegler, A. & Peschl, M. (eds.) Understanding
Representation in the Cognitive Sciences.
New York: Plenum Press. 127-134.
(会員以外の方もどなたでも参加いただけます。事前登録や参加費は必要ありません。)
講演者:木下 聡氏 ((株)東芝 研究開発センター)
タイトル:
「機械翻訳の現状と今後の課題」
概 要:
インターネットの普及により、一般の人でも直接海外の英文情報をアクセス
できるようになってきた。同時に、パソコンの性能向上により、普及型のPCで
も、リアルタイムでの翻訳が可能となり、誰でも気軽に翻訳ソフトを使える時
代となった。また最近では、ポータルサイトの中には翻訳サービスを提供する
ところや、インターネットでの英語での情報提供にサーバー型の翻訳システム
を用いる所もでてきている。このようなユーザの拡大に伴い、システム開発に
おいても、多様な文献に対して高精度な翻訳ができるようベースとなる翻訳エ
ンジンの改良を進めている。それと同時に、特許やオンラインニュースなどジャ
ンルに特化した処理や分野推定を利用した訳語選択など翻訳精度の向上を図る
研究を進めており、これらについてデモを交えて紹介する。
《参考文献》
[1] "Processing of Proper Nouns and Use of Estimated Subject Area for
Web Page Translation," Proceedings of TMI-97,
pp. 240-251,(1997.7)
[2]「英語ニュース記事ヘッドラインの翻訳」,第7回言語処理学会年次大会,
pp.249-252,(2001.3)
[3]「対訳文書から自動抽出した用語対訳による機械翻訳の訳語精度向上」,
電子情報通信学会 言語理解とコミュニケーション研究会,(2001.7)
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時 間:15:30〜17:00
講演者:嵯峨山 茂樹氏 (東大 大学院情報理工学系研究科 教授)
タイトル:「音声対話擬人化エージェント基本ソフトウェア開発のプロジェクト」
概 要:
機械が人間と話し、聞き、表情を変えるような、近未来のヒューマンインタ
フェースを目指すプロジェクトが進行中である。IPAの支援のもとに昨年度
から3年の計画で、10大学を含む専門家の協力体制でツールキットを開発し、
フリーソフトウェアとして配布する予定である。ツールキットは、音声認識、
音声合成、顔動画像合成、統合制御機構を基本構成要素とし、さらに
対話制御、サンプルタスク、プロトタイピングツールなども含む予定である。
本ツールキットの特徴の一つはカスタマイズ可能性である。顔画像は
一枚の人物写真から、音声合成の話者適応は数単語音声から、
さらに音声認識の話者適応、文法によるタスク記述、対話の制御なども
カスタマイズ可能である。この結果、応用システムごとに異なった顔と声を
持たせ、異なった言語理解と対話が行なえる。
我々は、今後の人間と機械のコミュニケーションの重要な側面は、音声言語に
よるコミュニケーションの能力と、表情や感情表出機能を持つ、実在感のある
人間型のインタフェースであろうと考えている。そのようなインタフェース部
は、個別に独自に開発するのは容易ではないが、共通に使える無償の
ソフトウェアとして提供されれば、この方向の可能性を広げることになるだろう。
また、音声情報処理や画像生成の研究分野に新しい研究開発課題を提供する
役割も期待される。
《参考文献》
[1]嵯峨山 茂樹, 中村 哲: "擬人化音声対話エージェント開発とその意義,"
情報処理学会研究報告 2000-SLP-33-1, Oct. 2000.
[2]甲斐 充彦, 伊藤 克亘: "対話システムにおける音声認識,"
情報処理学会研究報告 2000-SLP-33-2, Oct. 2000.
[3]森島 繁生, 四倉 達夫: "対話システムにおける顔画像生成,"
情報処理学会研究報告 2000-SLP-33-3, Oct. 2000.
[4]山下 洋一: "対話システムにおける音声合成,"
情報処理学会研究報告2000-SLP-33-4, Oct. 2000.
[5]新田 恒雄, 下平 博, 西本 卓也: "対話システムにおけるモジュール統合と
プロトタイピング," 情報処理学会研究報告 2000-SLP-33-5, Oct. 2000.
[6]川本 真一, 中井 満, 下平 博, 嵯峨山 茂樹: "音声対話システムにおける
擬人化エージェントの挙動の数理的モデル," 情報処理学会研究報告,
2000-SLP-32-13, July 2000.
(会員以外の方もどなたでも参加いただけます。事前登録や参加費は必要ありません。)
講演者: 住吉英樹 氏 (NHK)
タイトル:「マルチメディア教育支援システムの紹介
」
概 要:
NHKの持つ映像資産を活用したマルチメディア教育支援システムの研究を紹介する.
我々は,将来の放送教育サービスとして,放送番組だけでなくネットワークを
使用した補足情報の提供や意見交換の場を提供する放送サービスを検討してい
る.本システムは,この新しい放送サービスを前提として,学習をマルチメディ
ア技術で支援し,子供たちが自ら学び,考える力,さらにはメディアリテラシー
などの習得の支援を目指している.今回は映像やテキスト情報が収められた複
数のデータベースに対して自然言語で検索できるエージェント検索システムと,
学習者が検索したり独自に集めたりした映像や情報を組み合わせてマルチメディ
ア・レポートとして発表できる学習用DTPP(Desk-Top Program
Production)システムの2つのサブシステムについてデモを交えて紹介する.
《参考文献》
[1] 「エージェントを利用した映像検索のためのユーザーインターフェイス」
電子情報通信学会 人工知能と知識処理研究会, AI2000-26, 2000年7月
[2] 「ネットワーク上の映像リソースを使用可能なコンテンツ制作システム」
第6回知能情報メディアシンポジウム, WP3-2, 2000年12月
[3] 「NHK放送技術研究所 平成13年度公開資料 マルチメディア教育支援
システム」http://www.strl.nhk.or.jp/open2001/tenji/index.html
[4] 「NHKデジタル教材 おこめ」 http://www.nhk.or.jp/okome/
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時 間:16:00〜17:00
講演者: 澤田伸一 氏 (東京成徳短期大学)
タイトル:「 初等情報教育とその支援活動」
概 要:
情報化社会の進展は,いよいよ教育現場にも影響を与え始めた.平成元年の学
習指導要領の改定では中学校の技術家庭科に簡単なパーソナルコンピュータの
操作が加わっただけであったが,今回改定の新学習指導要領では高等学校で
「情報科」が新設されたり,小中学校でも学習活動にパソコンを有効に使うこ
とを明記している.しかしパソコンの操作ができる教師は少ないため,授業・
指導を具体的にどう進めたらよいか,悩んでいるのが現状である.
コンピュータを使った学習活動については100校プロジェクトや,こねっと・
プラン,Eスクエア・プロジェクトなどがあり,ネットワークを使った大規模
な学習活動についての報告がされている. しかし,これらのプロジェクトは教
育現場の意欲のある先生が中心となって進められたプロジェクトであり,中心
となった先生の負担は大きく,普通の公立学校で行うのは難しい.
この講演では平成9年から3年間,東京農工大学の大学院生が地元の府中第一
小学校で行った情報教育支援活動を紹介し,情報工学系の大学と公立小学校の
双方にメリットがあり,かつ,普通の小学校でも負担なく実行できる情報教育
支援活動についてのひとつの方法を示す. 具体的には,小学校の先生が提案す
る学習ソフトウェアを大学院生が作成し,それを授業で使用するという方法で
あるが,その是非について議論をお願いしたい.
《参考文献》
[1]「情報系大学院生による公立小学校での3年間の情報教育支援とその後」
bit, 2001年3月.
[2]"A support of IT education at a public elementary school by
postgraduate students of computer science major", Reports of IPSJ
Symposium on IT Education, pp.87-94 (1999.7).
[3]"Enjoyable Educational Software on an Interactive Electronic
Whiteboard Reports of 14th Symposium on Human Interface, (1998.9).
《これからの例会》
2001年度も二ヶ月に一度行われる予定です。11月29日の次
は1月の予定です。
《講演者の方へ》
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