1月例会
- 「V4野における陰影テクスチャーの特徴抽出」 花澤 明俊氏(生理研)
- 「人間の初期視覚系におけるテクスチャ画像の処理」 本吉 勇 氏(NTT)
アブストラクト
講演者:花澤 明俊氏(岡崎国立共同研究機構 生理学研究所高次神経性調節研究部門)
物体表面のテクスチャーは、その物体を識別したり、表面の材質、摩擦などの属性を判断する上で有用な情報源である。テクスチャー特徴の抽出にマカクザルV4野が関与するか否かを調べた。コンピュータ画面上に、輝度勾配(陰影)によって粒子状の細かい凹凸があるように見えるテクスチャー刺激を提示し、要素の密度、大きさおよび陰影の方向を変化させ、神経細胞の応答を調べた。多くの細胞がこれらの刺激属性に選択性を示した。それらの一部は空間周波数選択性では説明のできない振る舞いをした。まず、要素の陰影の方向に対し1方向性の選択性を示す細胞があった。上または下方向の陰影に選択的な細胞が多く、陰影からの立体知覚にみられる偏りと対応していた。また、粒子状のテクスチャーのみに応答し、正弦波格子やバー刺激に応答しない細胞があった。これらの結果から、V4野が、陰影から復元される3次元構造を含む、テクスチャーの特徴抽出に関与していることが示唆された。
《参考文献》
Ramachandran, V. S. Perception of shape from shading. Nature 331, 163-166 (1988).
Lehky, S.R. & Sejnowski, T.J. Network model of shape-from-shading: neural function arises from both receptive and projective fields. Nature 333, 452-454 (1988).
Gallant, J. L., Braun, J. & Van Essen, D. C. Selectivity for polar, hyperbolic, and Cartesian gratings in macaque visual cortex. Science 259, 100-103 (1993).
Hanazawa, A. & Komatsu, H. Monkey V4 neurons integrating the direction of local luminance gradients in shaded 3-D textures. Society for Neuroscience 29th Annual Meeting Abstracts 24, 370.3, 1999.
Hanazawa, A. & Komatsu, H. Extraction of texture features in macaque area V4. Society for Neuroscience 30th Annual Meeting Abstracts 25, 357.18, 2000.
講演者:本吉 勇氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報部)
入力画像からエッジを検出し、異なる領域に分割することは、最も基本的な視覚処理の一つである。人間の初期視覚系には、強度や波長に限らず、運動、形状、両眼視差など画像に含まれる様々な特徴の変化に基づいて、エッジを検出したり領域を分割する仕組みが備わっている。特に、細かな形状の違いに基づいてエッジを検出したり、領域を分割するはたらきは、テクスチャ分凝と呼ばれる。そのメカニズムは、かつてはシンボリックなトークンの比較とされていたが、現在では、画像に含まれる方位・空間周波数成分に選択的な線形フィルタ群の出力に対する、二次のフィルタリングと考えられている。これを受けて、我々はテクスチャ分凝機構の諸特性をシステム解析の観点から再検討し、その実像に迫ろうとしている。今回の講演では、以上の研究の流れをレビューするとともに、テクスチャ分凝機構が極めて優れた時間分解能をもつことを明 らかにした、我々の最近のデータを報告する。
《参考文献》
Julesz, B. (1981). Textons: the elements of texture perception, and their interactions. Nature, 290 91-97.
Landy, M. S. & Bergen, J. R. (1991). Texture segregation and orientation gradient. Vision Research, 31 679-691.
Kingdom, F. A., Keeble, D. & Moulden, B. (1995). Sensitivity to orientation modulation in micropattern-based textures. Vision Research, 35 79-91.
Motoyoshi, I. & Nishida, S. (2000). Temporal-frequency characteristics of two subsystems involved in orientation-based texture segregation. IOVS, 41 S222.